2023.11.1《 さよなら国立劇場・国立演芸場 》

1966(昭和41)年10月に開場した国立劇場が、耐震化に向けた再建のため、2023年10月末をもって57年間の歴史に幕を閉じました。

それにより、同敷地内の国立演芸場と伝統芸能情報館も取り壊されることに。10月の演芸場では「日本の寄席芸」と銘を打たれた公演が実施され、東西の芸人が日替わりで出演。私は18日(水)に林家木久扇師匠や春風亭小朝お兄さまを初めとする楽しい顔ぶれの中に入れていただき、思う存分、演芸場最後の高座を勤めました。

国立演芸場の竣工は1979(昭和54)年。私が噺家になった翌年のこと。もちろん上方の落語家の若造にとっては遠い国の出来事のような話。当時、上方の落語界は寄席小屋が絶えて久しかった時代。ですから、初めてお声掛けを戴いた時はとても嬉しかったです。それ以降、幾度となく呼んでいただき、その都度、一所懸命演じました。

近年の思い出は、2020(令和2)年に仕方噺『勧進帳』を演じたこと。新型コロナウイルスによる感染症が蔓延していた頃、「こんな時だからこそ、やりたいことをやろう」と自分の精神を奮い立たせて舞台に臨みました。幸いにも多くの方に喜んでいただき、今日に至っています。昨年の三遊亭兼好さんとの二人会も楽しかったなぁ。

国立劇場の舞台に自分が立つことは無いよなぁと思っていたのですが、今年の5月の前進座公演にトーク・ゲストとして呼んでいただいたのは望外の喜びでした。藤川矢之輔さんと『奴さん』を舞わせていただき、エンディングの三方礼にまで加えていただいたこと、生涯の思い出です。

歌舞伎のさよなら公演は『妹背山婦女庭訓』でした。18日(水)に観劇し、中村米吉くん扮する橘姫の美しさに惚れ込んでしまった私。ひょんなことから終演後、彼と逢うことができ、大いに芸談を交わしました。

振り返れば、さまざまな想いが詰まった国立劇場。最後の観劇日には、昭和な雰囲気のロビーや食事処「十八番」の様子もしっかり目に焼き付けました。

建て替えに際しては、アスベストなどの問題もあり、取り壊すのも大変な状況にあるようですが、時間がかかってもいいので、新しい劇場はお客様や演者の目線に立った設計で進められることを期待しています。