2016.08.16 《『稲荷俥』に登場する「お稲荷さん」──高倉稲荷と産湯稲荷》

上方落語『稲荷俥』には高倉稲荷と産湯稲荷の二つの神社が登場しますが、先日、その双方にお詣りしてまいりました。

まるで、人力車の俥夫(シャフ)が道順を確かめるが如く…。

まずは高倉稲荷神社──。

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高倉稲荷は高津神社の境内にある末社。

その高津神社は正式には高津宮と書いて「こうづぐう」とか「こうづのみや」と言います。太古の宮殿をさす場合のみ「たかつのみや」に読み方が変わるのだとか。

でも、我々はいつも親しみを込めて「こうづさん」と呼んでいます。

『高津の富』『崇徳院』『高倉狐』など、「こうづさん」と上方落語は切っても切れない間柄!

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その高津宮の末社の一つが、高倉稲荷。ご祭神はもちろん宇迦之御魂大神(ウカノミタマノオオカミ)、すなわち稲荷大明神…いわゆる「お稲荷さん」です。

ちなみに高津宮の境内には、摂社としての比売許曽神社や、今は亡き五代目桂文枝師匠の石碑もございます。

また、たらたらと坂を下りた一隅には、「陰陽石」という面白いスポットも用意されています。

さて──。

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その高津宮の正面の鳥居から東へ20分ほど歩いた所にあるのが、産湯稲荷神社──。

確かに、人力車に乗れば、10分以内で着く距離です。落語は案外、嘘はついてませんなぁ…☆

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小さな社叢(シャソウ)ですが、とても神秘的。

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ご祭神は、お稲荷さん(宇賀魂命)のほかに、比売許曽神社の祭神でもある下照比売命(シタデルヒメノミコト)と、大小橋命(オオオバセノミコト)。そして、豊国明神(豊臣秀吉)。

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由緒書によると、この地は明治の中頃までは「桃山」と呼ばれるほど桃の木で被われていたこと、太古においては味原池があって水も綺麗であったこと、大小橋命がここの井戸で産湯をつかったことが神社の命名の由来であることなどが記されていました。

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昼間でも少し妖しげで…夜になれば尚のこと、ましてや明治期においては「稲荷大明神の眷属(ケンゾク)である狐に悪戯(イタズラ)されるのでは」と不安がるのも無理はないなぁと思った次第。

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でも、私は産湯に来たお蔭で『稲荷俥』に臨場感を入れることができました。眷属さん、おおきに!

古典落語を次代に伝えるには、まず現場を歩くことですね☆