2011.07.26 「仁左衛門さんの熱演に感動」

久しぶりに仕事がオフとなった25日、道頓堀の松竹座で歌舞伎を観ました。いやぁ、実に素晴らしかった! 観て良かった! 元気をいただきました☆☆☆

 

今回は「関西・歌舞伎を愛する会 第20回 七月大歌舞伎」というふれ込みです。私がまだ学生の頃、実は大阪では歌舞伎にお客がなかなか入らなかった時期が長く続いていたのです。そこで、財界(おもに松下電器)や財団法人大阪21世紀協会が中心となって、歌舞伎公演を盛り上げるべく、「関西で歌舞伎を育てる会」を立ち上げました。世話人は今は亡き麻埜四郎というダンディーなお爺さま。私がちょうど関西学院大学の古典芸能研究部員であったこともあり、市川団十郎(当時、海老蔵)さんや澤村藤十郎さんや坂東三津五郎(当時、八十助)さん達に楽屋インタビューをする機会を作って下さったり、松嶋屋三兄弟…すなわち片岡我當・秀太郎・仁左衛門(当時、孝夫)のお三人を囲んでの座談会を開いたりして下さいました。「育てる会」の活動が効を奏し、当初の目的が達成されたとして、平成4年に「関西・歌舞伎を愛する会」と改名し、今日まで歌舞伎人気を支えて来たのです。

 

この日、劇場に行く前にフラッと立ち寄った喫茶「アラビヤ」で三津五郎さんに遭遇。「へぇ、今日観るの? それはありがとうございます。しかし、早いよねぇ。あなたが私の楽屋インタビューをしてから、もう32年ですよ」などと、お互い昔話に花を咲かせました(3年前に新橋演舞場で正蔵・三平・私の三人で『勧進帳』を演じた時の指導をして下さったことへのお礼も改めて申し上げました)。

 

さて、開幕──。昼の部は3本立て。最初は、関西では戦後初となる『播州皿屋敷』。愛ちゃんこと、愛之助さん扮する鉄山と、仁左衛門丈のご長男、孝太郎さん扮するお菊は見応えがありました。凄みがあって、分かりやすくて(^0_0^) 噺家としましては岡本綺堂の『番町皿屋敷』より、こちら浅田一鳥の『播州皿屋敷』のほうが親しみを感じます(怪談だけど)。

 

続いては、狂言を下敷きにした『素襖落』。松羽目物がよく似合う三津五郎さん。息子の巳之助くんとの息もピッタリで、魅力たっぷりの一幕でした。

 

そして最後が、川口松太郎の『江戸唄情節(エドノウタナサケノヒトフシ)』。「三味線やくざ」というタイトルも付いたこの芝居。片岡仁左衛門さん扮する主人公は、元やくざの三味線弾き。村山座で自分が立て三味線を勤める歌舞伎公演が始まったものの、やくざの親分の女を自分のものにした咎で江戸を追われます。彼女を女房にし、小田原で細々と暮らしますが、女房が病に倒れ、明日をも知れぬ状態に…。「死ぬ前に、もう一度だけ貴方の晴れ姿が見たい」との女房の願いを叶えるべく、江戸に戻り、村山座で歌舞伎舞踊の「連獅子」を演奏中、舞台にやくざが現れて…という筋なのですが、仁左衛門さんが舞台で実際に三味線を弾くのです。つまり、劇中劇となる「連獅子」の大薩摩から後半すべてを! そして、その演奏に合わせて、歌舞伎役者に扮する三津五郎さんと愛之助くんが踊るのです。もう見事としか言いようがありません。ストーリーの悲しさから来る涙と、感動の涙が目から溢れて止まりませんでした。

 

仁左衛門・秀太郎・時蔵・竹三郎・三津五郎・彌十郎…、東西の名優ががっぷり四つに組んだ「三味線やくざ」を観ることができ、とても幸せな気分に浸ることができました。その夜は、ワインバーと洋酒バーをハシゴしてしまいましたf(^_^)

 

27日は私、東京で仕事です。新宿・紀伊國屋ホールと日本橋・コレド三井ホールの掛け持ち。でも、松竹座で得たパワーでがんばります☆☆☆

 
今なお「三味線やくざ」の余韻に浸る私。