桂小米朝の「新・私的国際学」<31>(2003年12月7日)

現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『てるてる家族』はご覧いただいていますか。舞台は、昭和30~40年代の大阪・池田市――、私は主人公の両親が経営する喫茶シャトーの隣で本屋を営む松本のおっちゃん役で出ています。大袈裟な自分の演技に目を覆いたくなるときもありますが、唯一の救いは大阪弁。方言指導が要らない分だけはホッとしています。

逆に、東京の役者さんは大阪弁習得に悪戦苦闘の毎日です。関西発のドラマでも、全国ネットで受け入れられるようにするには、売れている(東京在住の)俳優で固めなければならないのが現実。そこで問題となるのがアクセント!よその土地に比べて、関西人はイントネーションにうるさいからねぇ。控室で役者さんが、ヘッドホンをつけて何度もテープを聞いているさまは、まるで語学教室のよう。

大阪と東京は、ことごとくアクセントが反対。赤と垢、橋と箸、雨と飴・・・。

次に難しいのが、抑揚の大きさ。「何言うてんねんな」という音階には、1オクターブ以上のひらきがあるのです。

最近は、東京一極集中で、標準語の平板化が目立ちます。かつては東京でも「事所」「百店」(下線部分が高くなります)と発音していたのに、今では一本調子で「事務所」「百貨店」という人が増えました。

この傾向は外来語に対して顕著で、「リポート」「サポーター」「プロモーション」と、平板で言うようになりました。ところが、大阪人は必ず抑揚をつけます。「リート」「サーター」「プローション」・・・。実はこれ、英語のアクセントと同じなのです。そう、大阪弁は国際的だった!

今やテレビの影響で、「リポーター」「マネージャー」「サーファー」など、人を表すカタカナ文字はおしなべて平たく発音するようになりましたが、ここらで、何事も大阪基準こそ国際社会に適応しているということを知らしめようではありませんか(エスカレーターの左歩きのように)。

ただ難点としては、自分基準を大阪基準と思い込んでいる人が多いことですかね・・・。