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2011.10.20 「昭和な夜」


今日は仕事が無かったため、團治郎と米輝に『七度狐』の稽古をしました。尤も、このネタは私自身、米朝から付けてもらったことはなく、最近は滅多に高座にかけていないので、いつもの口写しではなく、手法を変えて『米朝落語全集』で覚えさせることにしました。まぁ、平たく言えば、覚え直すのが面倒くさかったので、忙しさにかまけて、「おい、これで覚えなさい」と弟子二人に言うたのが、数日前。で、本日、武庫之荘の米朝宅での稽古と相成ったわけです。

 

大師匠の米朝も立ち会いのもと…いや、実際にはソファに座って、手に新聞を持ち、そこに目を落とした状態で、團治郎の『七度狐』が始まりました。途中、團治郎が「(支払いの)釣りは要らんで」と言うべき所を「銭(ゼニ)は要らんで」と言うた瞬間、間髪入れずに米朝が「銭(ゼニ)はさっき渡したがな。釣り銭(セン)や」と指摘したのです。「あっ、聴いてはる…米朝師匠」。私も、團治郎も、米輝も、凍りつきながらも有難い瞬間でした。

 

稽古の後は、皆でうどんすきを囲んでの夕食となり、その後はテレビタイム。今夜の番組はTBSの『蘇る昭和の歌姫伝説』。堺正章さんの進行で、昭和という時代を彩った5人の歌姫の人生を、過去の映像とともに振り返る内容となっていました。テレサ・テン、ちあきなおみ、山口百恵、本田美奈子、そして美空ひばりの5人です──。5人とも大好きだった私は、喰い入るように画面を見つめてしまいました。こないだみたいに涙だけは流さないようにと気をつけながら…。ところが、傍にいる弟子二人は、感動のベールに包まれている私とは、どうも温度差があるみたい。訊けば、團治郎も米輝も「本田美奈子さん以外、リアルタイムでは観てません」とのこと。「そうか、二人とも20代前半やからなぁ」と、自分が年を取ったことを改めて痛感し、父に「昭和は遠くなりにけりですね」と言ったところ、「うん、わしもひばり以外、誰も知らんのや」「……」。嗚呼、昭和は長くなりにけり!

  うどんすきを食べて満足げの父と私。

 

ちなみに、『蘇る昭和の歌姫伝説』を見終えた後、NHKのニュースにチャンネルを変えると、野田総理が出演していました。ニュース番組だから、もちろん生放送。そこで大越健介キャスターが野田佳彦首相に54分間に渡って話を聞くというスタイル──なかなか画期的でした。総理も「落ち着いて話ができるので、嬉しいです」と仰ってました。実際、中身の濃い話が出ていたと思います。そろそろテレビも、昭和の落ち着きを取り戻す方向に行ってくれるかな。