「言いたい放談」<10>(2007年8月17日)

去年のちょうど今ごろ、私はデザイナーの三宅一生さんと出会いました。落語と狂言をミックスした「落言」という名の舞台を観に来られたのです。その時、異分野の芸術の融合に強く興味をお持ちの一生さんから、「新しくオープンする私のアートスペースで、何か新しいことをしていただけませんか」との依頼を受けました。私は「もちろん、喜んで!」

それから一年――、東京ミッドタウンに誕生した「21-21(トゥーワン・トゥーワン)」という空間で、ただ今、四組の芸人が独自の舞台を展開中。茂山狂言会、柳家花緑、イッセー尾形、そして私。

一生さんの条件は、まだどこでもやっていないものをすること。それなら・・・と、常々モーツァルトの生まれ変わりを自認してきた私は、落語とオペラを融合させた〝おぺらくご〟を演じることにしました。「えっ、それってよそでもやったのでは?」と訝る方もありましょうが、これまではオーケストラとのジョイントでした。ところが、今回は邦楽器(琴、三味線、笛)だけで「フィガロの結婚」を演奏するのです。

18世紀の作曲家モーツァルトが21世紀の日本に降り立ち、長唄と出会います。洋の東西は違えど、同時期に同じテーマで音楽が作られていたことに気づくモーツァルト。新しい空間に巻き起こる新芸術に乞う、ご期待!