2023.4.30《 新しい舞台の形を目指して!》

Covid-19、いわゆる「新型コロナ」が蔓延してから、舞台芸術のあり方がガラッと変わりました。さまざまな分野の舞台において共通するのは危機感です。緊急事態宣言発令中の時はもちろんのこと、それが解除され、新型コロナウイルス感染症の扱いが2類から5類に下げられた今でも、以前のようにお客さんが押し寄せてくることがうんと少なくなりました。一つには団体のお客様がかなり減ったこと。もう一つは外出するなら狭い劇場でじっとしてるより行楽に出かけるほうが健康的だという意識が広まったことが理由ではないでしょうか。

歌舞伎界の大御所に、かなり早い段階でその危機感を抱いておられた方がおられます。片岡仁左衛門丈と坂東玉三郎丈。かつて「孝・玉」時代に人気を博し、伝説化されていた演目を次々と上演されたのですから、ファンは堪りません。『桜姫東文章』『廓文章 吉田屋』『四谷怪談』などなど、若き日の面影そのままに…いや、その時以上に若々しく演じられました。もちろん、チケットは完売。同じ舞台人として、大いに触発された次第です。

「コロナ」以降、伝統芸能の世界もさまざまに変化しました。のんべんだらりと続けている公演には、お客様は見向きもしなくなりました。逆に、芸人が本気で考え、本気で楽しみ、本気で演じる興行にこそ、お客様も本気で応援して下さるのではないでしょうか。

魅力ある舞台の実践! これが問われているようです。

今年4月に石川県立音楽堂(邦楽ホール)での独演会で新しい試みを打ち出しました。前半に落語を二席喋ったあと、後半は「上方落語の寄席囃子の魅力」をお客様に体感して頂くべく、舞台袖で演奏していた三味線奏者の浅野美希さんと、助演の佐ん吉くん、それに私の弟子の慶治朗を舞台に登場させ、私の進行でさまざまな寄席囃子を演奏。楽器紹介に始まって、出囃子や、ハメものと称する落語の中で演奏される音楽などを聴いていただき、最後の一席に芝居噺の『本能寺』を、おはやし全員をそのまま舞台に座らせたまま、演じたのです。本来は陰(舞台袖)で奏でる囃し方をお客さんに見ていただく手法は、私自身とても楽しかったです。そして、興奮しました。たぶん、お客さんも(^◇^;)

これからも、機会があれば、新しい舞台づくりに挑戦しようと思います。

米朝事務所HP http://Beicho.co.jp

実は、きたる7月9日(日)のサンケイホールブリーゼの独演会では、トリに仕方噺『勧進帳』を演じます。歌舞伎十八番の一つでもある冨樫・弁慶・義経の人間ドラマをいかに一人で演じるか。ご期待ください!