桂小米朝の「新・私的国際学」<6>(2003年5月11日)

ビートルズやローリングストーンズが一世を風靡した1960年代、ベンチャーズの活躍も周知のとおり。その器楽性の高さに大いに触発されたギタリストがいる。

古川忠義――彼は単なるファンの域をこえ、ベンチャーズの四人のパート(ドラム、ベース、ギター2人)をギター一本で演奏してしまうのだ。彼らの代表曲『キャラバン』では、まず低音弦2本を交差させてドラムの音を出し、次に右手の親指でベース部分を細かく奏でながら、残りの指で主旋律を演奏する。途中のテケテケテケテケ・・・も心地よい。

私は間近で聴いて虜になってしまった。『ブルースター』という曲では、オルゴールのような音が鳴る。まるで魔法のよう。

彼は大阪生まれの大阪育ち。42歳の好青年(おじさん?)だ。やはりギタリストである父親の影響を受け、幼いころからギターに親しんだ。

15歳で本格的にデビューし、あのナルシソ・イエペスに師事したというから、うらやましい限り。大阪フィルと共演したり、ノーキー・エドワーズ(ベンチャーズのメンバー)の来日公演に参加したり、米テネシー州ナッシュビルでステージジャック(飛び入り演奏)を果たしたりと大活躍だ。

若いころにクラシックを教え込まれたのが良かったと振り返る。

「どんなに激しいエレキサウンドになっても、品がないといけません」

クラシックからジャズ、ラテン、ロックまでこなすオールラウンドプレーヤーだ。

このほど三枚目のアルバムが発売された。その名も『ソロ・デ・ベンチャーズ』。録音には、ヤマハが開発したサイレントギターを使用。これは野外でも雑音が入らずに録音できるすぐれものだとか・・・。

世界に二つとないスタイルで、彼は今日もライブハウスを駆け回る。大阪発の国際的ギタリストに熱いエールをおくります。