2013.05.28 《四世 茂山千作さん 逝去》

5月23日、大蔵流狂言師の茂山千作さんが肺癌のため、お亡くなりになりました。93歳という年齢を考えると“大往生”とも言えますが、狂言界の重鎮の訃報はやはり幾重にも寂しさが募ってまいります。

 

千作さんの芸は理屈抜きに面白かった。存在自体が可笑しかった。橋懸かりから登場して、名乗りのセリフを発した途端に、こちらが吹き出してしまったことも再々あります。

 

でも、放埒な中に、ふと哀れを感じる一瞬があったりで…。よかったなぁ。

 

ひらのりょうこさんが『能狂言インタビュー』のコラムで記された文章の中に、こんな件(クダリ)があります。「千作さんの笑いの芸には、どんな人間も狐や猿もそれがそこに在ることを心の底から肯定し尊ぶ自然体の暖かさに充ちている」。正鵠を得ていると思います。

 

私は、お父様の三世千作さんの舞台もよく拝見しておりました。こちらは飄々とした味わいがあり、実に楽しかったです。

 

室町時代から少しずつ形を変えながらも、根幹は変えずに伝えて来られたお家芸──。茂山家の「笑い」は着実に次世代へ受け継がれています。今後ますます繁栄されることでございましょう。

 

千作さんは今頃、先に他界された弟の千之丞さんとともに、酒を酌み交わしながら「あ~っはっはっは」と高笑いをしておられるのではないでしょうか。

 

心よりご冥福をお祈り申し上げます☆