桂小米朝の「新・私的国際学」<34>(2003年12月28日)

最近、結構披露宴などで万歳をする姿がめっきり減った。昔は、駅のホームでもよく見かけたものだが・・・。

欧米人には万歳の光景が奇異に映るらしい。そりゃそうだ。両手を挙げて直立しているさまは、彼らには強盗にピストルを突きつけられている姿にしか映らない。全員で「降参、降参、降参!」と言っているようなもんだ。

それが理由かどうかは分からぬが、若い世代になるにつれ、万歳をしたがらない傾向にあるようだ。

かく言う私もその一人。宴席で万歳が始まっても、手を中途半端に挙げ、蚊の鳴くような声で唱和している。何となく気恥かしいのだ。

では、若者は万歳をしないかといえば、さにあらず。Jリーグやプロ野球の観戦で自分の応援するチームが勝ったときなど、「バンザーイ!」と叫んで、大いに盛り上がる。どうやら万歳は、かなりの興奮状態になったときに一丸となって発する日本人独特の歌声であるようだ。

万歳という言葉は、古くから存在する。昔は「バンゼイ」とも読んだ。長い年月という語義からいつまでも栄えよという意味になり、慶事に用いることが習慣づけられた。また、鼓を持ってはやし立てる芸能の萬歳からお笑いの漫才へと派生した。

万歳三唱が最初登場したのは、明治22年2月11日のこと。大日本帝国憲法発布記念式典において、明治天皇に向けて「万歳、万歳、万々歳!」と発したのが始まりとされている。以来、天皇家はもとより、民間の祝い事にも使われるようになった。ただ、両手を挙げるスタイルが明治以前にあったかどうか、私は知らない。ご存じの方がおられたら、ご教示のほどを・・・。

面白いのは、当選が決まった選挙事務所の光景。万歳三唱している後援者と一緒になって万歳している議員さん。「あんた、誰に万歳してんねん」と言いたくなる。

来年こそは、心の底から「万歳!」と叫べる明るい年になりますように。