桂小米朝の「新・私的国際学」<16>(2003年7月20日)

この夏、関西は虎フィーバーで盛り上がる。例年なら6月末で事実上シーズンを終えているタイガースだが、今年はすでにマジック45。リーグ優勝はまず間違いない。

「阪神優勝で景気回復や!」。俄然意気込む商店街だが、実際はどうなるのか、国際学の見地から私的に調べてみた。

今から18年前の昭和60年、阪神タイガースは21年ぶりの優勝(バース・掛布・岡田の花形トリオ)に酔いしれたが、実はこの年、バブル経済が作られた年でもあった。歴史に残るプラザ合意――ニューヨークのプラザホテルに当時の中曽根首相が招かれ、金融緩和を約束させられた。円高が進み、公定歩合が下げられ、国民の預貯金が土地や株へとシフトした。結果は周知の通り、平成2年(1990年)2月21日に株価を落とされて以来、今日に至っている。

その前の優勝(バッキー・村山の黄金コンビ)は、昭和39年。高度経済成長の象徴というべき東京オリンピックが開かれた年である。これを機に、あらゆる分野での自動化が進んだ。

その前は昭和37年。この年から田畑に農薬が使われ出した。いわゆる「食の工業化」が始まった年である。

すなわち、阪神優勝の年は(良きにつけ悪しきにつけ)産業構造の変革に大いにかかわっているのだ。さすれば、来るべき今年の優勝は何を意味するのか。

ズバリ、「学歴社会の消滅」だと、私は考える。バブル崩壊から13年――。学閥で支えてきた企業が次々と倒産。さすがに官僚組織は温存されているが、近い将来、学閥とは何の関係もない個性豊かな人たちが輩出し、その根幹を揺るがす日が訪れるような気がするのだ。

政官界のリストラ。いよいよ、おもろい人材の宝庫である〝関西〟の出番だ。まずは今年、大阪近鉄バファローズにも是非とも優勝してもらいたい。この秋、阪神と近鉄が日本シリーズで顔を合わせることが、関西復権の第一歩だ。