桂小米朝の「新・私的国際学」<35>(2004年1月4日)

平成15年の大みそか――、私はテレビの前にくぎ付けになっていた。〝紅白〟でもなければ、〝レコ大〟でもない。テレビ朝日の『ビートたけしの世界はこうしてダマされた!?』という番組にである。

特に、「アポロの月面着陸はヤラセ映像だった!?」のコーナーには目を見張った。

スタジオでは、去年の春にヨーロッパで放送されたビデオテープをもとに検証が繰り広げられた。それによると、アポロ11号の月面着陸の様子は、映画『2001年宇宙の旅』で使用されたセットを再び使って、キューブリック監督により撮られたものであると指摘。米ソの冷戦時代――、さらなるミサイル開発を迫られたアメリカ政府が、軍事費拡大に対して世論を賛成に導くため、表向き「人類を月に送る」と宣言したのだとか・・・。米政府高官たちが次々とそのことを証言していく中に、ラムズフェルド国防長官の姿もあった。

2年前、私は、小欄で「アポロって本当に月へ行ったの!?」(M.ハーガ著)という本を紹介したが、これでいよいよ人類は月へ行かなかったと確信した。だからといって、いまだ到達していないとはかぎらない。ひょっとして、すでに月の裏側には〝街〟があるやもしれぬ・・・。

ひとは衝撃的な映像であればあるほど信じ込むきらいがある。湾岸戦争のときも、「油まみれの水鳥」や「泣いて訴える少女」の映像を見せられただけで、ある一定の方向に世論が動いた。この複雑な国際社会を生き抜くためには、ふとした疑問を心に留めておくことが大切だ。

お正月、テレビを見過ぎると考えることすら忘れてしまう。時々は、じっくりと腰を据えて、私の落語を聴こう。誰や!じっくり考えさしてもらいますっちゅうてるんは!