小米朝流「私的国際学」<30>(2001年8月18日)

生まれて初めて阿波おどりに参加した。まさに一泡(あわ)食わされた。これ、盆踊りなの?もっとも驚いたのは、徳島の人がみんな踊っているという現象。子供からお年寄りまで、茶髪の兄ちゃんまでが一体となって・・・。

江戸時代、蜂須賀公によって栄えたとされる阿波おどり――現在、約10万人の踊り手によって、900以の連(グループ)が存在する。よそ者でも気軽に入れるのがよいところ。

私は、先輩の笑福亭学光さん(徳島出身)が作っている〝はなしか連〟に入れてもらった。お囃子が鳴ると、わずか10秒で同化。「同じアホなら、踊らにゃ損、損」

音楽が印象的だ。三味線・笛・太鼓・鉦(かね)で奏でるリズムは日本人の琴線に触れる。単純な二拍子なのにノってしまう。

そして、何より振りが個性的だ。男は腰を落として、足を外側に運んで行く。手は、指を微妙に動かしながら、ひじを曲げたり伸ばしたり・・・。女も同じように足を運ぶのだが、編みがさをかぶり、両手は高く上げている。この姿がとても色っぽい。編みがさを付けた女性は全員きれいだ(はずしたときはさておき・・・)。

聞けば、この踊りは夜ばいを描写したものらしい。だから、男は頬かむりして腰をかがめ、女性の身体を触るような手つきをする。女は恥ずかしさのあまり顔を隠すが、両手は上げている。昔は乳房を少しのぞかせたとか・・・。そういえば、女性の衣装は必ず片肌ぬいだ形になっている。裾もまくれている。

おそるべし、徳島県人。それを前面に打ち立てて、笑顔で踊り続けるとは・・・。元来、踊りには男女のまぐわいを暗示するものが多い(タンゴやベリーダンスなど)。阿波おどりはその日本型だ。しかも群舞として洗練されており、とても健康的である。ひょっとして、汎宗教的行事の極致とも言えるのではないか。一度、戦争でいがみ合っている地域の人々に参加してもらおうよ。争いなんかバカらしいと気付いてくれるかも。