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小米朝流「私的国際学」<5>(2001年2月3日)

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婚礼で太閤園に行くことになった。地下を走るJR東西線ができたからとても便利だ。大阪城北詰駅で降りて地上に出ればすぐだと思い、電車に乗った。ところが駅に着くと、太閤園の案内表示が全然ない。ようやく藤田美術館という文字を発見。「じゃあ、こっちかな」と、③番出口から出て、事なきを得た。


だが、はたして現在、“藤田美術館=太閤園”の歴史をどれだけの人がご存じか。太閤園がかつての財閥、藤田伝三郎男爵のお庭だったということを・・・。案内板の藤田美術館の横に「太閤園」と書き加えるだけで、うんとわかりやすくなると思うのだが。


同じことは、地下鉄にも言える。なんば駅に松竹座の表示がない。道頓堀の文化の殿堂の名前がないのだ(ちなみに新歌舞伎座は載っている)。興行の宣伝ポスターは貼ってあるのに、黄色い案内板には書かれていない、どこから出たらよいのやら・・・。やっとの思いで⑭番出口の階段を上がっても、そこに何の矢印もない。かなりの人が南へ逆行する。私は、松竹座出演中、三日に一度は「すんません、松竹座はどこですか」と道を訊かれた。大概、金龍ラーメンあたりで・・・。


その点、東京はさすがに国際都市だ。すべての官公庁や劇場、小さな会館に至るまで表示が行き届いている。すごいのは、乗る時にすでに目的地の最寄り駅と出口に近い乗車位置が分かること。例えば、営団地下鉄有楽町駅から国立劇場へ向かう時、「一両目に乗られるのが便利(永田町駅下車)」と、ホームの柱に図解で記されている。


しかも、地上へ出ると必ず矢印がある。街全体が協力的だ。明治座のある浜町や人形町界隈など「ここには素敵な劇場があるよ」と胸を張る地元の人たちの愛情が伝わってくる。


大阪が文化都市でありたいのなら、まずお客さんの視点にたって看板を作るべきだ。担当の方々が実際に地下鉄を利用して劇場へ足を運んでみてはいかがか。